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葉ノ倉さんの体を支えつつ階段を上がり、彼の部屋の前まで来た。
「あの……すみませんが……鍵借りますね…」
葉ノ倉さんの鞄から鍵を取り出して部屋を開け、中に入った。
部屋の中は、葉ノ倉さんの爽やかな香水の匂いと、タバコの匂い、そしてテーブルの上に何冊も置かれている本の匂いが微かにした。
ベッドの枕元にさえ、英語で書かれた難しそうな本が数冊置かれている。
「葉ノ倉さんっ……ここ横になって下さい……」
私は葉ノ倉さんをベッドの上に座らせて、両腕を支えながらそっと彼の体を倒した。
葉ノ倉さんは、横になったと同時に手の甲で額を押さえた。
蒼白な顔には、じわりと汗が滲んでいる。
力無くフローリングの床についている彼の足を持ち上げてベッドの上に乗せ、側にあったタオルケットを体全体に掛けた。
そうだ……
何か冷やすもの………
肩に掛けたままだった自分のショルダーバッグの中からハンドタオルを取り出し、濡らしに行こうとした時だった。
パシン……
突然、後ろから冷たい手が私の手首を掴んだ。
「!?」
驚いて振り向くと、葉ノ倉さんが切なそうな表情を浮かべて小さく呟いた。
「……行くな…」
ドクンッ……
初めて見る彼のそんな姿に、私は一瞬で動揺した……。
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