1人が本棚に入れています
本棚に追加
私立東都防衛学院中等部二年二組である僕、一三四善司は森の中を疾走していた。
昼を過ぎていくらか太陽にも陰りが見えてきたものの、以前蒸し暑い。厚ぼったい訓練服と八十九式自動小銃、中等部制式背嚢が一層体力を奪っていく。いっそのことこれらを全て捨ててやろうか、とできないことを胸中で呟く。
突然目の前の小枝が僕のゴーグルを叩く。無論ゴーグルをしているので痛くはないが、驚いてしまい、思わず立ち止まってしまった。
その間にも前を走るクラスメイト遠藤長太郎と眞柴想一はどんどん先を行く。
長太郎は身長百七十センチ、体重六十四キロ。僕と違ってがっしりとした体格。想一も僕より身長が高く、中肉中背、走り方も力強く、二人との差はどんどんと開いていく。
僕は慌てて二人に置いていかれないよう、再び走り出した。
現在夏季合同演習中。「前期で培った成果を存分に発揮せよ」それがこの演習を担当する神谷公子教官が演習前に僕らに告げた言葉だ。先輩からこの神谷教官の二つ名が「鬼」であることを聞いてから、ある程度は覚悟していたものの、その厳しさは想像以上だ。成果を発揮するというよりも前期の特訓がなければものの一時間でぶっ倒れていたかもしれない。そもそも前を行く二人と違って、色白・やせ男と馬鹿にされるような僕には全く向かないよ……。
最初のコメントを投稿しよう!