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「お疲れさん」
実習終了後、もはや虫の息で無理やり水を喉に押し込んでいると声をかけられた。重い頭をぐるりと回すと神谷教官が立っていた。
「か、神谷教官……お、お疲れ様です……」
驚きで声が裏返ってしまい、そのまま尻すぼみになっていく。長太郎や想一相手には幾分慣れたが、初対面の人だと人見知りが災いしてうまく話せなくなる。
「実習は終了している、そんなにかしこまらなくていいよ」
それを神谷教官は実習の緊張と捉えてくれたらしい。
「一三四君だったか。君はもう少し体力をつけた方がいいな。今のままだと小隊を組んだ時に支障が出る」
随分と痛いところをはっきり言う人だと思った。でも嫌な感じはしない。明朗快活な物言いはむしろ素直に自分の短所を認めさせてくれた。
「そのことなんですが……」
僕は少し言いよどんだものの思い切って告げることにした。
「僕……その、無理かもしれません」
「無理って、学院が?」
「はい。正直体力的についていけないし、今日の実習も長太郎の足を引っ張ってばっかりだったし……」
「ふ~ん」
あれ? 軽い。自分としては結構重大なことを、意を決して言ったつもりだったんだけど。
「それは担当の先生にはもう告げた?」
「いえ……まだです」
「ふ~ん」
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