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「先生は……夢があるなら簡単にあきらめるなってことですか?」
「まあ単刀直入にそういうこと。なんというかもったいないのよ」
「?」
教官の意図することがわからず首を傾げる。
「ほら、うちって防衛学院でしょ。やっぱり他の中学とは違うでしょ。だから大人達は期待するのよ。どんなちゃんとした考えをもって、入ってくるのかって」
それはある意味僕も思った。自分を棚にあげていうわけではないが、こんな学院を選ぶ生徒はどんな目的をもって進路を決めたのか正直予想がつかなかった。
「ところが、ところがよ……」
神谷教官ははーっと大げさに溜息をついた。
「蓋をあけてみれば、君みたいなちゃんとした夢を持った生徒がいないいない。以前の環境から逃げ出したいという理由から銃撃ってみたいという短絡的なものまでもうウンザリよ。ヒーローになりたいから、なんて幼稚なのもあったわね」
すみません、最後のは多分親友のものです。
「だからね、あなたのように、自分で夢を決めて、それを叶えるために自ら道を切り開いている君が辞めてしまうのは、先生としてはもったいないって思うわけ」
神谷教官は真面目な口調に戻り、優しい眼差しで僕にそう告げた。
「ま、そうはいっても、じゃあ先生達が君たちくらいの時に高尚な夢や目標を持っていたのかって聞かれると困っちゃうんだけどね」
柔らかな微香が鼻をくすぐる。汗や香水とも違う、そう、例えるならこれは母親の匂いだろうか。って、なにを考えているんだ僕は。思わず赤面した顔を隠すように俯く。
その動作を、神谷教官はそれでもなお迷っていると教官は取ったらしい。
「友達とかには相談した?」
「いえ、まだです」
「だったら友人にも相談してみなさい。結局は自分で答えを出すしかないのだけど、同世代の意見というのも大事かつありがたいものよ」
そういって神谷教官は軽く手を振りながら去っていった。
「なにはともあれ、大いに悩め少年! 君達はまだまだ若いんだからね」
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