第一思考

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【立川英晴の回想】  彼女と出会ったのは4月。入学式前の教室に、一番初めに来たのが彼女だった。 「先生は男にしてはちょっと背が低いですが彼女とかいるんですか?」  初対面で、唐突に、名前すら聞く前にそんなことを聞いてきた少女だった。それ以外にも彼女はずかずかとなにも考えずに人の痛いところをついていく。自分が見たまま、気になったままを問いただしていくのだ。 「貴方、後頭部に禿げがありますよ!」 「先生は男の人にしては背が低いですね!(二回目)」 「(女子に向かい)貴方はなんで女装をしてるんですか?」  そのくせ1日経てばけろりと忘れ、また自分の探求心のままに踊り続ける。そんなよくわからない、癖の強い少女だった。  ただ、彼女の真骨頂は、普段なにも考えていない彼女が思考した時に現れる、というのを私は今日初めて知ることになる。 【回想・了】
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