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あたしが
その間違え探しの答に気が付いのは、
洗面台の前で歯を磨いた後、
寝癖を整えている時だった。
鏡に映る自分の斜め上。
時計の針は、
いつもより少し横を向いていた。
[8時18分]
電車通学の、
あたしの学校の予鈴がなる頃だ。
「イヤァァァァァァ!!!!」
思わず発した、悲痛な叫びに
ガキ達のはしゃぎ声が一瞬止まり、
直後にどっと笑いが起こった。
その笑いがあたしに向けられたものだと
気付いたのは、
硬直状態から解放された一分後のことだった。
――――――――――――――
「へえそりゃ災難ね」
さして興味も無さそうに、
仲良しの都が
メイク直しをしながら言った。
都は美人でオシャレで優しくて、
面倒見の良いお姉さんタイプ。
だけど都にとって興味の無いことに対する無関心っぷりはあからさまだ。
そうそう、あたしは夏刈はる。
夏なんだか、春なんだかよくわからないような名前だと
よく言われる。
「災難て……。もっとないの?
んーと………共感とかさぁ」
「はるみたいに、
あたしは大遅刻なんてし、ま、せ、ん」
「わぁっ!!都の意地悪ぅっ!!」
「意地悪で結構。
はるこそ、そんなだらしないと振り向いて貰えないよー?」
「あぁ………雅先輩のことね」
あたしは気の抜けた声で返事した。
橋本雅先輩は、
イケメンで文武両道で
学校中の人気者。
幼なじみである都は
雅先輩の隣を歩く事を唯一許される人間らしく、
美男美女で街を歩くと
すれ違う人々は決まって振り返る。
……………らしい。(都本人談)
かといって都は、
雅先輩に興味は全くないようで
以前
ミーハーなあたしが何気なく
「雅先輩カッコイイよね」
と言ったのを、
恋だ恋だと言って
やたら応援してくれている。
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