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止まらない風、止まらない音、動きを止めない、人間たち。
昔は、何でも考えられたんだ。楽しいこと、嬉しいこと。
でも年を重ねるに連れて、悲しいことや苦しいことを考えるのが得意になっていった。それは中学生の時の話、僕はもう高校生になった。
高校生で、いじめられて考えたことは、自殺だった。
授業を途中で抜けて、静かな緑色の廊下を歩いた。外には、燦々と煌めく陽の光と、動く肉塊たち。ああ、そう言えば僕も、動くだけの肉塊だった。
なんで、あの肉塊たちは、自ら消えようとしないのだろう。なんで、消え去るその時を、悠々と待っているのだろうか。
階段を上る度に、鈍痛か走る。これは、いつの傷みだろう。昨日か、一昨日か。
静寂した階段に、屋上の古ぼけたドアが開く音が一瞬だけ、こだました。
外は騒がしい声が聞こえた。鳥や虫の、綺麗な鳴き声は聞こえない。肉塊の不快な泣き声だけが、あの青空に届きそうなほど、その場を支配していた。
「どうしたの?」
その女の子に手を伸ばす。届きそうで届かない距離を縮めたのは、誰でもない。僕だった。
彼女の体に触れると、良い匂いが香り、驚いて彼女は振り返った。
「あなたは…?」
「君も、終わらせに来たの?全てを…」
彼女は黙って頷いた。泣き顔を直視出来ずに、青空を見上げた。すると、昔よく考えていた、楽しいことや嬉しいことを思い出した。
そうだ。僕は一目見て分かった。
「一緒に、始めよう…新たな一歩を」
そして僕は、彼女の手を取って、その青空から抜け出した。
そうだ。僕は一目見て分かった。
僕は、彼女のことが好きなのだ。
‘こうして僕は、自殺をやめました,
完
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