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数千年前━━。
愛した女性と悲しい死別をしてから、ガルダは人間と距離を置いて生きてきた。
その彼が下界に降りた。
魔城を探す任務を受けたヴィシュヌと共に。
「ラクシュミーからアムリタを貰って来て下さい。大至急ですよ。」
「何で手紙を付けるんです?伝書鳩じゃあるまいし……。」
脚に文を結ぶヴィシュヌに首を傾げて尋ねるガルダ。
話せるのだから、そんな物は必要ないのである。
「鷲が喋ったら不審に思われるでしょう?良いから急いで下さい。シルビアさんが危ないんですから。」
焦るヴィシュヌの顔を見て、チラリとシルビアを見る。
魔族の毒に侵され苦しいはずなのに、それでも彼女は笑顔でいた。
心配しているシャスタを気遣い、安心させる為に微笑んでいるのだろう。
「綺麗な人ですね……。ヴィシュヌさん、人妻に手を出しちゃ駄目ですよ?」
「ば、馬鹿なこと言ってないで、早くアムリタを、」
図星だったなとクスクス笑い、ラクシュミーの所へ飛ぶ。
アムリタを持って戻ったガルダを、微笑んで迎えたシルビア・ナイト。
苦痛の下からにっこりと微笑んでいた。
「ありがとう……ガルダ……。良い子ね……。」
彼女からの愛情にドキリとする。
愛されている錯覚に陥りそうだった。
だが、アムリタで回復した彼女はすぐにシャスタに飛びついた。
そのラブラブぶりに驚いて。
あの愛情は錯覚だったのだと思い直す。
それから数回彼らと行動を共にした。
直接の接触は無かったが、彼女の傍は心地が良かった。
魔城の破壊が完了し、二人が神々の仲間入りをして。
本当の姿で彼女に会ったのは、狂ったヴィシュヌが立ち直ってからの事だった。
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