カゲロウデイズ

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『彼は死にました』  涼やかな声が、無機質に、無感情に言う。  それがあんまりにも勘に障って、沸き上がるままに剥き出しの敵意をぶつけた。 「かがみは、ハァッ、死んでねぇ…ッ!」  コイツは敵だ。自分の中の何かが叫んだ。訳の分からない嘘を並べる、自分を騙そうとする悪いヤツ。  オレは引っ掛からない。そんな分かりきった嘘なんかの信じるわけないだろう。火神が死ぬわけない。今の今まで一緒にバスケして、一緒に喋ってた。あいつは生きてた。死んだなんて、あり得ない。だって数秒前まで、オレと、オレと一緒に…。 『これが現実です。いくら願ったって、死人は帰ってこない』 「黙れッ!!」 『君は本当に、頑固ですね』 視界の上端に映る、うなじまでの空色の髪が揺れた。風ではない。ヤツが、こっちに歩いてくる。その振動で揺れている  
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