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――…ピ…ピピ、ピピピピ、ピピピピッ
「――――ッ」
ドン、と衝撃を受けるように目が醒めた。混乱した状態で不規則な呼吸を繰り返す。全身、汗でぐっしょり濡れていて気持ち悪い。
「……あ?」
視界が暗い。しかしぼんやりと見える景色が、自分の部屋であることを伝えていた。
「なんでオレ、へやに…?」
呟く声が嗄れていて、喉がカラカラに渇いていると自覚する。今何時だろう。騒がしく鳴り響くデジタル目覚ましを手に取り、青峰はその表示に深く息を吐いた。
――8月14日、午前12時03分。
「……何だよ、夢かよ…」
酷い夢を見た。何たってあんな夢を見てしまったのか。火神が死ぬなんて、縁起でもない。あいつはそんな簡単に死ぬようなタマじゃないのに。
幼なじみにこんな話をしたら、嬉々としてお節介を働かせそうだ。夢占いとか。冗談じゃない、占い信者は緑間だけで十分だ。
ハァ、もう一度ため息を吐き出して、青峰は立ち上がった。寝直す前に水でも飲もう。今度は巨乳の美女との諸事情、とかの夢が見たい。
ふとドアの前で立ち止まって、浅黒い手で頬に触れた。あの冷たい手の感触が残っている気がして、慌てて首を振ると足音を立てて台所に直行する。
涼やかな声が、煩い蝉の声が、耳に残っている気がした。
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