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――8月15日、正午。
「おい青峰、ボーッとしてんじゃねぇよ」
火神に小突かれて、青峰はハッと我に返った。1on1の最中、ボールは自分の手の中だ。
「悪ぃ」
「どうしたんだよ、らしくねぇじゃん」
「んー…。……なぁ火神、オレから誘っといて何なんだけどさ。今日はもう、帰らねぇ?」
「はぁ?」
「悪いっ」
「まぁ…、別にいいけど」
少し訝しまれたが、火神はあっさりと承諾してくれた。
昨日の夢が、頭から離れない。火神が死んでしまう、あり得ない夢。意識から振り払おうとするのに、カゲロウの意味深な言葉が邪魔をする。
一体何なんだ。青峰は胸に渦巻く気持ち悪さに眉をひそめる。夢より早く切り上げた。夢の通りには火神は死なない。なのに、この不快感はなんだ。
公園を出て、道に抜けた。夢とは別の出口。大丈夫だ、何も起こらない。気持ちを落ち着けるために大きく深呼吸する。工事の音が、止んだ気がした。
……止んだ?
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