322人が本棚に入れています
本棚に追加
「ふぅん、売れるんだ……」
私は聞き流すように、単調に答えた。
つい半年前までは……
イサは私と同じ、ただの高校生だったのに
たった1度廻った季節は
雑誌に載るか
はたまた見るかの関係を、築いてしまった。
『何も変わらないよ、ゆずとオレは』
ずり下がった、冴えないメガネを
中指でちょんと直しながら
イサはそんなふうに、言うけれど
あっち側とこっち側の世界は
あの世とこの世じゃないけれど
やっぱりそんなに
近いものじゃない。
「先月デビューしたばっかりなのに、早くも目に留まるなんて……やっぱりイサは相当なもんだよ」
旬はそう言うと、雑誌の記事を読みながら
ウンウンと、ひとり頷いた。
最初のコメントを投稿しよう!