ご褒美

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この頃の私はとにかくついていた。 この間の新規で契約の取れた方から紹介してもらい、もう一件、新規で契約が取れた。 櫻井課長にウキウキしながら報告した。 「綾瀬、偉いぞ!」 櫻井課長も満面の笑みで誉めてくれた。 「あ、ありがとうございます。」 櫻井課長のフェロモンに一瞬、くらっときた。 「へぇ~、凄いじゃん、綾瀬。」 そう言ったのは同じ課の木津さん。ちょっと気難しい人で、支店のエースなのだが、私はちょっと、いや、かなり苦手。 新入社員の頃、ちくちく嫌味を言われ続けたから…。今でもだけど…。男の癖にと思いつつ…。 私は、木津さんに、にこっとだけして自分の席に戻った。 その後も外回りをしてると、櫻井課長から電話があった。 「も、もしもし。」 緊張してどもってしまった。 「綾瀬、この間の焼き肉の事なんだけど、今週金曜日大丈夫か?」 きたーーーーーーー! 「大丈夫です!」 櫻井課長と焼き肉に行けるのは、契約が取れた時にかなり期待していたけど、自分から言い出すのも図々しい気がして、言いだせなかった。 櫻井課長があの約束を覚えててくれただけで嬉しかった。 「じゃ、藤田も誘っといてくれ。あいつも最近、頑張ってるみたいだしな。よろしく頼むよ。」 「分かりました…。」 ちーーーん…。 そりゃ私だけっていうのも、上司としてそういう訳にはいかないのも分かるけど…。 私だけ、部下として特別扱いして欲しかった。 こんな事思うのは子供染みてるのは分かるけど…。
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