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藤田君も焼き肉に行くことになり、あっという間に金曜日になった。
帰り際、藤田君と廊下ですれ違うと、
「綾瀬、今日はお前のために一肌脱ぐよ。」
と藤田君がニヤリとしながら言った。
「何か企んでいるの…。?」
私は嫌な予感しかしなかった。
櫻井課長の事は、中学生の時なんかに、かっこいい先輩をアイドル化して憧れている気持ちに近かった。だから、どうにかなりたいとか、そんな気持ちは持っていなかった。
私は、もういい大人なんだけどね…。
仕事も終わり、櫻井課長と藤田君と私の三人で焼き肉屋に行き、途中まで三人でワイワイと焼き肉を頬張っていた。
すると突然、藤田君が、
「ちょっと電話なので、すみません。」
と携帯電話を持ちながら席を立って、 お店を出ていってしまった。
しばらくして藤田君は戻って来ると
「課長、すいません。彼女が急に具合が悪くなって心細いから来て欲しいって言ってるんで、本当に申し訳ないんですけど、先に帰らしてもらってもいいですか?」
と申し訳なさそうに言った。
櫻井課長は、
「そう言うことなら、早く行ってやれ。というか藤田、彼女いたんだな。」
と淡々と言った。
藤田君は「そうなんすよ~。」と言いながら、そそくさと、ハンガーに掛けてあった自分の上着を持つと、
「課長、今日は本当にありが
とうございます。では、お先に失礼します。」
とお店を出ていってしまった。
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