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あれから櫻井課長は、客先に引き継ぎの挨拶であまり会社にはいなかった。
業務連絡くらいしか話すこともなく、あっという間に歓送迎会の日になった。
歓送迎会の会場でも、櫻井課長はもちろん上座、私は下っぱなので下座…。
支店の皆がワイワイ楽しんでるなか、私は飲み物なんかの注文やグラスが空いてないか目を配る。下っぱの役割ですからいいけど。
櫻井課長の方を見ると周りは事務方のお姉さま達に囲まれていた。
そこへ藤田君がやってきた。
「綾瀬出遅れてるぞ。」
「何が?」
「櫻井課長の周りが固められてて入る隙間がないぞ。」
「いいよべつにぃ~。」
私はどうでもいいように答えた。
藤田君は私にビール瓶を渡すと
「これで挨拶してこい!これから世話になるんだろ!」
いつになく親切に気を回してくれる藤田君。
「…。」
こいつ、絶対これから櫻井課長ネタを使って私で遊ぼうとしている。櫻井課長を好きになっていく私で遊ぼうとしている。
絶対そうだ…。
藤田君のいつもと違う態度で確信した私だったが、櫻井課長と喋りたかった私は
「ありがとう。ちょっと行ってくる。」
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