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「ふぅ……」
「ひゃっ……!?」
耳に掛けられた言い知れぬ感覚を全身に行きわたらせる湿った空気に、文字通り飛び上がってしかも変な声が出てしまった
なんだなんだと焦ってキョロキョロすると、そこには朝から母性溢れる笑顔の姉さんが、悪戯に成功した少女のような矛盾する感じで立っていた
「ふふ、おはよう、朝だよミクちゃん」
「え、あ、おはよう……?」
状況が掴めないのと、変な声が出て恥ずかしいのとで目を合わせられず、取りあえず状況把握へ
「あれ……俺寝ちゃったのか」
視界いっぱいに入って来るまごうことなき朝を示す朝日と、次いで目に留まったのは小さなテーブルとその向こうには空いた椅子。テーブルの上には記憶をよみがえらせる本が鎮座していた
「もう、こんなところで寝たらダメじゃない。ミクちゃんの布団が空だった時はビックリしたんだからね?」
笑顔だった表情を眉を八の字にしてお母さんの如く言ってきた姉さんに、少しの申し訳なさが勝ってしまい思わず謝る
「ごめん姉さん」
「うん。……ところでその本は?ミクちゃんあんまり難しい本は読まないよね?」
コロコロと変わる姉さんの表情の豊かさに驚きながら、チラッと入った視界には布団の中でスースーという寝息がちらほら。どうやらみんな朝は苦手らしい。むしろ姉さんが健康すぎるぐらいだ。流石元社会人
それよりもこの本、マスターから貰ったものだけど、特に何も教えてもらったわけではないので話してもいいのかな、と思ったのでペチャクチャ
「へー……見てもいい?」
「うん」
と、簡単に返事をして渡した
寝落ちしたのがどのあたりかは覚えていないが、書いたのは確か決闘のこととプチ課外授業だけだったはず
思春期特有の見られて困るものなど何一つないと思ったから渡した、のだが
「………流石ねミクちゃん。この量を一晩で書いちゃうなんて」
「……?そうかな。そんな大した文量じゃないと思うけど」
日記形式だから起承転結のような山あり谷ありの構成じゃないし、ただ思ったことをスラスラ綴っただけのもののはず
それに覚えている範囲ではあまりページ数は埋まってなかった気がするけど………
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