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嫌な汗をかいた時はお風呂にかぎる
どうやら姉さんに起こされた時間は朝食まで二時間ほどあるまさに早朝だったらしく、今でこそこっちの家では起床がやや遅くなったとはいっても、やはり枕が違うと蘇るのか、前世と同じぐらいの早い時間だった
そんなわけで、マスターの理解を越えた何かによって出た汗を流すべく、朝風呂にいざ参ったわけだ
いつもなら昔テレビで見た『朝のシャワーは髪を傷める』という、ほんまでっか?と言いたくなることが原因で入らないのだが、やはり嫌な汗は流すにこしたことはないし
これは決して昨日の夜は色んな人がいてゆっくりできなかったとか、お風呂が好きだから何度でも入りたいとか、そんな私情は挟まってない。サンドイッチされてない
これはあくまで嫌な汗を流すという崇高で健全な精神に基づく行動であり、あれだ、いつでも清くありたいという、潔くかっこよく生きていたいという、あの、あれ、つまりあれだ
てなわけで、昨日は絶望しかなかった脱衣所でも鼻歌がでてしまうのも必然であり、ドキがムネムネするわけだ
カラカラ、という横開きの曇り扉をあけ、やはりいつでも顧客のニーズに応えるべく最高のコンディションを整えているのか、むしろ多すぎるような湯煙も今ではまるで苦労してたどり着いた最奥の宝箱を開ける前の冒険家の如き心情でヒタヒタと中へ入り、
「……………」
そしてこの十二分な三点リーダーである
「ふんふふーん♪」
先客がいた
身体を洗って向こうを向いており、鏡が曇っているのか後方に立つ俺には気づいていない
俺が見た限りでは俺のほかに起きてたのは姉さんとルカだけだ。しかも姉さんは旅館の調理に興味があるのかそっちにいったし、ルカはまだまだ覚醒状態ではなかった。そもそもバレないようにきたわけだし
勿論他のメンツも眠っており、いや、カームさんはどうかはわからないが、レーヌさんは完全に寝てた。抱き枕抱えてたし。「ぐへへ……いただきま~す」とか言ってたし。夢の中ではきっと何かを食べてるのだろう。それがナニかはわからないが
後ろ姿とここが女湯だと言う事を加味しても、マスターではないだろう。鼻歌を歌うマスターが想像できない
消去法、マスターのほかに『長い黒髪』は俺の知り合いにはいないことが結論へと直結していた
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