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そのまま適当に挨拶をして別れた。ここの浴場はアミューズメントパークの室内プールみたいに広いので、そうそう出くわさないだろう
……というか
「び、びっくりしたばばば……」
ぶくぶくーっと口元までお湯につかり呟いた
危なかったホント危なかった
そうだ。俺は今女であって年齢も思春期ど真ん中なのだ。見た目が完全に女性で、黒い髪は長くて線が細く、光沢さえ見える白い素肌を曝け出したハルさんと言えど男なのだ
そんな性別という超越できない規定事項を前に、年頃の女の子が反応しないわけがない
……まずったなぁ。ちょっと怪しまれたかもしれない
そういえば今までは戻ることとかフラグに巻き込まれないようにすることに必死でそういうことは考えなかったな
俺が元々は男だって知っているのは姉さんと、張本人である黒ローブだけのはずだ。ギルドカードにも性別が女ってなってたし、ギルドカードなんて偽装しようがないしその筋には疑われることなど無かった
が、怪しいのはマスター。そしてきっと今回の遭遇でハルさんの心の隅にも引っかかってしまっただろう
………まぁ、バレたところで特に変わりはない。最終目的は男に戻ることだし、それが早くなるか遅くなるかだけだ
ただ、まぁ、心配ないとは思うが、こっちでできた数少ない関係に願わくば軋轢なんかが生まれないことを祈ろう
………特にレーヌさん辺りとか想像もできない
あつーいお湯に浸かっているいるはずなのに寒気がした
ーーーーーーーーーーーーーー
「結構長風呂なんだな、ほれ」
「あ、ありがとうございます」
寒気を抑え込むようにして極楽浄土を全身で享受し、一通りの湯船を満喫したあと、時計を見ると朝食十分前になっていたので上がった
岩盤浴って気持ちいいんだなー。時間のある時に家に創ろうかなーとか思って暖簾を潜ると、そのちょっと先のベンチでハルさんが浴衣姿でビンを二つ持って座っていた
渡されたのはコーヒー牛乳。うまー
なんで長風呂のあとの牛乳とかコーヒー牛乳ってこんなに美味しいのだろうか。それがビンに入ってるとなおいいのはもっと不思議である
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