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確かに流したはずの汗をなぜかもう一度感じながらも、朝食との関係上もう一度風呂に入るなどといった贅沢はできずに直帰
どうやら俺を待っていたらしく、みなさん行儀よく座って談笑してましたすみません
そんなこんなで、朝には最適な、サッパリとしつつ一日の活力になるとわかるような料理に舌鼓を打ち、いい具合に腹が満たされたところでマスターが口を開いた
「今日からは予定を組んでいるのだけれど」
丁度従業員の方々が朝食を下げ終えた直後、いつ聞いても背筋がピシッとするような声色で、されど微笑を称えるマスターが続ける
「まぁ、予定は未定と言うし、『先方』の出方次第ではそれも変わると思うけれど、大筋は変わらないと思ってくれていいわね」
「『先方』……?これから誰かに会いに行くんですか?」
「ええ、向こうからすれば『会う』というよりも、『遭う』という方が正しいとは思うけど……ふふ」
なんとも妖しいという言葉がぴったりな微笑を称えるマスターだけど、具体的なことはよくわからない。とりあえずここからは移動するようだ
あれ、でも最初に二泊三日って言ってたような……もっとゆっくり温泉を堪能しておけばよかった。移動先でも温泉があることを願おう
なんて考えていると、どうやらみんな俺とは違った不安や疑問を抱いたようで、レーヌさんが火ぶたを切った
「でもマスター、それだと私たちが招かれざる客みたいに聞こえるんだけど。そこって行ってもいいの?」
「いいのよレーヌ。これはちょっと前の『約束』に基づいたちゃんとした来訪よ」
「で、でもそれだとアポイントメントは……」
「ふふ、勿論とっていないわ。だって、そのほうが楽しいでしょ?」
とても綺麗な、マスターにしては珍しいニッコリとした笑顔でルカへと返答したマスター。それに対しルカは頬を引くつかせていた
こんなに長くマスターと同じ屋根の下にいたのは初めてだが、ハルさんが苦労人というのがなんとなくわかった気がする
「さて、それじゃあ具体的なプランなのだけれど……」
というところでピタッと止まり、スッと立ち上がったマスター
「続きは全員そろってからにするわ。誰かさんの長いお風呂で時間が押しているのだし、ね」
マスターが悩殺するようなウィンクを飛ばし、俺に直撃した
いや、ホントすんません
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