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気分をよくしたハルさんがそのまま常識講座を続けようとしたまさにその瞬間、マスターが止めてくれた
「帰ってからでも出来るわ。折角の旅行なのよ?今しかできないことをしなくてどうするの?」
「うっ……すまん」
マスターにたしなめれら、今度はハルさんがガックリ
5億歳のマスターに『今しか』なんて言われれば、説得力が半端じゃない。ハルさんが凹んでいることが何よりの証拠だ
「ねーマスター、もしかして歩くの?」
さぁ出発するぞ、という雰囲気の中、空気をぶった切るようにレーヌさんがだるそうに言った
いくら景色が良いからと言っても、流石に長時間歩くだけでは飽きるというもの
俺は森林浴ができるならいいかなーとか思うが、周りが木々に囲まれ女の子が皆無の状況ではレーヌさんから文句が出るのは必然と言えた
さっきの旅館は従業員のエルフの方々のほとんどが女性だったしね。一体何人が犠牲になったのか、くわばらくわばら
「安心しなさい。歩くと言っても一時間やそこらよ。言ったでしょう?予定は組んであるって。たまには女の子以外でも目の保養にしなさい」
「……はーい」
渋々返事をするレーヌさんだけど、門をくぐった直後にはちゃんと景色に目を奪われていたので、森林浴だと思えば、それこそ目以外にもいい保養になるだろう
というわけで旅館を出発進行
「気持ちいいねーおねえちゃーん」
「そうだなー心が洗われるなー」
マスターとハルさんを先頭に、早すぎず遅すぎずのペースを保って歩く
風に揺れる木々のせせらぎもさることながら、たまに聞こえる動植物たちの声も反響してまさにシンフォニア……ん?(疑問)うん、シンフォニア……うん(確信)
てな感じで、最初こそぶーぶーと言っていたレーヌさんも途中から加わり森林浴を満喫し、頭のてっぺんから足の先までもドップリと浸かっている感覚を味わいながら、ふとした疑問が浮かんだ
「そういえばハルさん、見えないところにどうやっていくんですか?」
姉さんが行けたのはそういう仕様の転移魔法陣があったからであって、普段は結界とやらの中で安住していると聞いた
見えなかったのもその結界のせいだとして、どうやってその見えない何かを探るのだろうか。いや、マスタースペックで、とか言われたら納得せざるを得ないんだけどさ
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