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「お、ミクルたちも来たのか」
用意されたテーブルにかじりつくように貪っていたのは、さっき王とやらに謁見したグラスさんだった
謁見するとマスターが言ったときは大分嫌そうにしていたグラスさんだが、今はそんなことなど無かったかのようにいい笑顔で頬張っていた
うん、イケメンだろうと野郎の口に食べかすがついててもなんとも思わないな。美少女補正ってすごい
「うわぁ、美味しそうだね!」
「うちの国だと見たことない料理ばかりねぇ」
挨拶もそこそこに、バラバラになって各自軽食を楽しもうとした、のだが。意外や意外、グラスの他にも軽食の軽の字も霞むほどに静かに、しかし大胆に貪っている人がいた
いや、ほんと意外だ
「あの、あれってもしかしなくてもカームさんですか?」
「ん?何言ってんだよミクル。どっからどう見てもカームだろ?」
食べる手を休めてキョトンとした顔でグラスさんに言われた。いやでもほら、カームさんの食事風景を見たことないからかもしれないけど、あんなに空き皿が増えてったら、ねぇ?
もう本当にすごい。前にクレアさんが『お見合いパーティ』で見せていた立食らしからぬ食べ方と引けをとらないぐらいの勢いだ
決定的に違うのは食べ方だろうか。クレアさんは流石王族なだけあって、ガツガツという食べ方の中にも上品さが垣間見えていた
が、カームさんは手づかみでドンドン口に放りこんでいる。勿論いつもしているマスクのようなスカーフのようなものは外して
それでも汚く見えないのだから、マスクを外して素顔が見えるカームさんは美人なんだなぁと思った。美人補正すごい
こうしちゃいられないと、俺も目に入ったサンドウィッチを一つ
「あ、美味しい」
「ほんと。でもこれ何をサンドしてるのかしら……。食べたことない味だけど」
たしかに味わったことないなぁと思いながらも咀嚼。サラダと肉のようなものが見事にマッチして絶妙な味だ。軽食とはいえこれはがっつくのも無理はない
「そういえば他のみんなはどうしたんですか?」
給仕さんに淹れてもらった紅茶を啜りつつ、詰め込みすぎて胸をドンドンしているグラスさんを無視しながら、なんとなしに聞いてみた
「っ…ぶはぁ…死ぬかと思った。他の奴らか?それならーーー」
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