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「あら、奇遇ね」
「………」
表通りはミクルの予想通り、露店や縁日、さらにはちょっとしたレクリエーションコーナーまで設けられ、子供が楽しめるまさにお祭り状態になっていた
そんな笑顔溢れる場所は、己の性癖からすれば人種の壁などあってないようなものであるレーヌにとっては天国に等しかった
来た当初は気持ち悪いほどの歓迎ムードに辟易していたが、それも全ていつも自分の国で受ける恐怖の視線だと思えばなんてことはなかった
だからこそこうして街中を堂々と散策し、私腹ならぬ眼福を肥やすことができていたのだが、
「ふふ、そんなに嫌そうな顔をしなくてもいいじゃない」
「ベ、ベツニソンナコトナイデスヨー」
それが原因でいつもより注意散漫になり、我らがギルドマスターが目の前に来るまで気付けなかったのだが
レーヌ自身マスターに対して苦手意識を持っており、レーヌのペースに持っていけない数少ない人物である
それを知ってか知らずか、いや絶対に間違いなくそんな心中を察しているマスターからお誘いがかかった
「たまには二人でお茶でもどうかしら」
珍しいどころの騒ぎではない組み合わせに、他の面々がいれば、え?となるだろう。みんなレーヌの抑止力なりえる最大戦力だと理解しているのだ
「え、えーと……」
先程までの変態的な表情はどこへやら、目を絶えず右往左往し、冷や汗もダラダラである
それを見たマスターはクスクスと笑い、
「じゃあ」
レーヌの視界から一瞬だけマスターがブレ、
「これでどうかしら」
「 」
声にならない声とはこのことか
あまりの光景にレーヌは自分の目をこすり、次にはいつも通りの変態的な吐息を漏らし始めた
「マ、マスター……これってつまりそういうことよね……?」
「どう受け取るかはまかせるわ」
クスクスと笑うマスターがそのままくるりと方向転換
「さ、向こうで楽しくお話しましょう?」
「勿論!!!!!!!どこまで着いて行くわ!!!!!!!」
完全に本調子に戻ったレーヌの叫びにより、容姿的にも人種的にも目立つこと請け合いな二人が、さらに注目を集めたのはいうまでもない
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