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悩んでいるロイを他所に、この路地裏の小空間に入ってからずっとしゃがんで何かをやっているボロボロローブ
何をしているかはわからないが、大方の予想はロイにはついていた
(貧困層……それにご家族はもう……)
ロイは聖国の生まれかどうかは知らない
自身の出生を気にする間もなく、生きて、妹を守るためだけに生きてきた
よって聖国がどういった国かも知らなければ、表通りではあんなに笑顔が溢れている傍ら、裏通りでは次の日の飯にありつけるかも知れない状況があることも知らなかった
ここで手を差し伸べるか否か。二つに一つ
逡巡もせずに答えを出す
(残念ですが…)
踵を返し元来た道を辿るロイ
聖国に限らず、裏の事情はどこもかわらないことを知っているロイは、時に非道だと言われても、そのすべてを妹のために費やしてきた
ならばこれからも変わらない
(はずだったのですがねぇ…)
一瞬浮かんだとある人間の顔がロイの脚を止める
(敗者は勝者の言いなりとは、よく言ったものですよ)
苦笑いをしつつ、露店で買った食べ物を手にさらにUターン
どこか晴れやかな表情で、優しい目じりを落としてボロボロローブのいた場所へと戻る。何がロイを変えたのかはロイ自身わかってはいる
しかしそれを肯定する気は無い
しからば否定する気もない
どこから軽くなった足取りに、遂には能力も解いて素の状態で独りでいるボロボロローブの元へと歩を進めた
はずだった
「おいこいつだよなぁ?」
「あぁ間違いねーぜ。浮かれてる中心街の奴らの近くに今時こんな布きれみてーな奴がいるわきゃねー」
「げひゃひゃ!これで俺らも金がたんまりってんだから楽な仕事だぜまったくよー!」
「違ぇねー」
戻った場所には、未だしゃがんだままのボロボロローブの周りに、大きなお友達(比喩じゃない)が四人ほどいた
全員武器を所持しており、一目で獰猛で血気盛んだと分かる獣人だ
そんな場所へと足を運んでしまったロイの脳裏には、ロイを『神々の墓場』へと誘った人物の顔がありありと浮かんでおり、てへっ☆と舌を出していた
そんなロイが零した言葉は、現状を的確に表していた
「解せぬ、です」
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