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「ーーーーーーーでも」
影は自身の激情を抑え込むように瞳を閉じた
世界が闇に包まれる
闇に包まれた世界では彼を視ることは叶わない
しかし再び瞳に光を灯したところで、そこには彼以外のモノが沢山映る
いらない
いらない
彼以外なんていらない
隣にいる赤髪もでかい赤髪も黒髪も長い茶髪も黒い女も黒い男も金髪も男も女も子供も老人も全部全部いらないいらない
袂を分かった同胞は否定した
彼一人しかいない世界など視ててもつまらない、と
だが影には彼しか視えていない
彼しか視るつもりもない
影はただただ彼を視る
視て視て視続けて、視果てる
なぜなら彼が好きだから
なぜなら彼を好きだから
なぜなら彼に好きだから
なぜなら彼の好きだから
そして、なぜなら彼は好きだから
彼は影を好き
だから影も彼が好き
「好き。あなたが好き」
影は不敵に目を細め、瞳の中で彼を捉える
いつまでも、どこまでも
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