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「途中までは俺とルカの後ろにいたのは覚えてるんだが……どうもルイちゃん曰く路地裏に消えたらしい」
ギュッとハルさんの服の裾を摘まんで俯くルイちゃん。いつもあれだけ一緒に居るからか、離れてしまうとやはり寂しそうだ
そもそも、だ
「あのシスコンがこれだけルイちゃんから離れるってのもおかしいだろ?……あんまり考えたくはないが面倒事に巻き込まれてんじゃないかなって」
最後の方をルイちゃんに聞こえないようにこちらに近づきボソッとハルさんが言った。しかしそれは俺も思ったことで、あのシスコンが理由もなしにルイちゃんの傍を離れるとは思い難い
ならば、やはり何か事情があるか、巻き込まれたか、と考えるのが妥当だ
「どうします?探しに行きますか?」
「うーんしかしあいつもガキじゃないしなぁ。てめぇのことはてめぇでやるだろ?強制的にっつっても裏の世界にいたんだし」
「それはそうですけど……」
と、姉さんが言葉を切ってチラッと視線を下へ
「……ハルおにちゃん」
そこには瞳を潤ませ、裾を掴む手がさらに強くなったルイちゃんが
うっ……とハルさんがなってから、結論までは早かった
「しゃーない。ま、ライトウィルならいざ知らず、異国の地だしな。探してみるか」
ルイちゃんの頭を撫でながらほほ笑むハルさんはあれだった。何とは口が裂けても言えないがあれだった
寝るには早い時間だったし俺も行こうかなーとか、こういうのってまずは聞き込みからかなーとか、ちょっとの冒険心をスパイスに探偵ごっこみたいで少し楽しみにしている俺を含め、いざ捜索へ、というところでさっき聞いたばかりのビクつく声が後ろから聞こえた
「ロイなら大丈夫よ」
今俺たちは部屋に一つしかない扉の前で話していたのに、なんで俺と姉さんの後ろ、つまり部屋のど真ん中にいるのか、なんて疑問を持っても聞こうとすら最近思わなくなってきた不思議マスターがいた
「あん?どういうことだ?」
「そういうことよ」
即答したマスターはルイちゃんの頭を撫で、大丈夫、今日は私と寝ましょうね、と言うとルイちゃんがうつらうつらとし始め、ついにはマスターにボスリともたれた
うん、さっきあんなことがあったからマスターのそのセリフはちょっとあれだ。などと絶対に言えない
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