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なぜこの子に賞金がかけられているのか。そもそもこんな子に誰が賞金などかけたのか
色々理解の出来ないことだらけだが、ロイは裏の世界にいた頃に似たような状況に何度も関わってきた
ロイは専ら傭兵として雇われていたため、時には雇い主が何に携わっているのか知らないこともある。そしてそれは有事の際のトカゲの尻尾ならぬカメレオンの尻尾となったことも度々あった
つまり、こういったことへ首を突っ込めば、カメレオンの尻尾どころかそのまま首だけ置き去りにされることがあるのである
ーーよし、関わらないでおきましょう。私は何も聞いてません
と、適当に相槌でも打ってこの場を去ろうとしたロイ
が、どうやら意識のある獣人は自分で小悪党と言っただけあって、何かを勘違いしたのか聞いてもいないのに喋りだした
「あんたが同業者じゃないってことはわかったが、何も知らないってわけじゃないんだろ?」
「え?いや私はーーー」
「あぁ大丈夫だわかってる。あんたが俺らをのしたのにも関わらず、命まで取らないってことはそういうことだろ」
フッ、と悟ったような顔をする獣人に、どういうことですか…、と心底を嫌な顔をするがまったく気づかれない
「だがあんたも詳しくは知らねーみたいだな」
「まぁ、はい」
何も知らないし何も知りたくないんですけどね、と付け足そうする前に獣人がしゃべりだす。しかしそこは自称紳士を名乗るだけあり、何も言わず立ち去るということができないロイ
「こいつは今賞金稼ぎの野郎どもの注目の的なのさ。……なぜって顔をしてるな。だがそこまでは俺たちも知らねぇ。割りのいい的がありゃ賞金稼ぎにはそれでいいのさ」
だが、と一度言葉を切り
「こいつを指名手配やら賞金首にした奴なら、みんな知ってる」
「その人とは……?」
もうここまで来たらいっそ聞いてしまおうと、諦め半ば、興味半ばで続きを促した
根っからの語り性なのか、獣人は一拍ほどタメを作り、その人物を言ってのけた
「この国の、女王様さ」
一陣の風が吹き、ロイが驚きにボロボロローブの方を見ると、そこには汚いローブが地面に落ちて風に揺らいでいるだけだった
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