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自分が壊したことを棚に上げつつ、グラスの得意分野ということもあり壊れた壁はメイドの手を煩わせることなく新品同様に直させた
そのままマスター、ハル、グラスの三人での談話が始まった
「いやー参った参った。まさか本当に文字通り『デコピンを飛ばす』なんて思わないもんなー」
「もう少し正確に標準を合わせられたらと後悔しかない」
「おおおぅい!それどういうこと!?その標準でど真ん中ストレートぶち抜かれるの俺の頭か!?頭なのか!?」
「それ以外に何があるってんだよ」
「逆にそれ以外ねーのかよ!」
先程まで重力が増しているのではないかと錯覚する雰囲気だったのにもかかわらず、グラス一人が入るだけでそれもかなり緩和された
そんなコントのようなものを静観し紅茶を啜っていたマスターが、そろそろいいかしら、と受け皿に置く
「そうだな、本題に戻らないと。というかお前ホントなんであそこにいたんだ?」
「あー……お前らが二人で話す内容が気になったってのもあるんだが……」
そこで少し言いづらそうに視線をマスターへ
「なんとなくこいつのやりたいことがわかった気がしたからよ。それを確かめに、って感じだな」
悪いな、盗み聞きするつもりはなかったんだ、と後頭部を掻くグラスに、ふふっ、とマスターが笑う
それを見たグラスも自己回答が強ち間違えではないと察し、少しため息を吐くが、その傍ら、ハルはまだよくわかっていなかった
「おいおい、俺に説明なしかよ。それにグラスにわかって俺にわからないってかなり気分悪いぞ。厨房でゴキブリを見た時ぐらい気分悪い」
「それって俺がゴキブリ以下ってことですかねぇ!」
「被害妄想も甚だしい。対比されたゴキブリに謝れ。というか堆肥になれ」
「養分でしかなかった!」
ショックを受けたグラスが控えていたメイドに紅茶を頼むも、そのメイドからの視線も先程の壁のこともあってかゴキブリを見るような目だったことは余談である
「んで、早速説明をしてもらいたいんだが」
「そうね。私もそろそろ眠たくなってきたわ」
お前いつ寝てんだよ、というツッコミは心に仕舞ったグラスだが、心で思ったがゆえに長年の付き合いからか冷や汗を流し始めた
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