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カラマーゾフの兄弟なんかがどうして僕の夢の中に出てきたのだろう。
僕はそれを読んだことも無いし、誰かから内容を聞いたことも無い。
ただその名前を人生のどこかでふいに耳にしただけで、読書家ではない僕はドストエフスキーの小説なんて一つも読んだことがなかった。
だが夢の中の僕は、いや、思い返してみるとあれは僕ではなかった。その誰かはカラマーゾフの兄弟について両手をパタパタさせながら楽しそうに話していた。
僕はそれを彼の後ろにへんてこな像みたいに突っ立って聞いていたのだ。
しかしそこは音のない世界だった。
だから僕は彼が何かを話していることは分かるが、何を話しているのかはまったく分からないはずだった。
しかし彼はカラマーゾフの兄弟について話していた。それはとても奇妙なことだが、僕にはそれがよく分かったのだ。
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