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お茶を冷蔵庫に戻そうとしたとき、右足の親指で何かの角を蹴った。痛い。
それはマルセル・プルーストの失われた時を求めて日本語訳第一巻だった。
その本を拾い上げながら僕はため息をついた。
この小説を借りてからもう十日になる。
図書館の貸出期間は二週間なので、あと四日で読み切らなければならない。
それは僕にはほとんど不可能だった。
文章は的確で描写はさすがに美しいのだが、内容がまったく頭に入ってこない。
なんといっても主人公たちブルジョワの思考が僕とは全く異なるものでわけがわからないし、まあ興味が無い。
僕はこのだらだらと続く、汚く無意味な大学生活にそれなりに満足しているのだ。
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