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いったいどうして僕はこの小説を借りたのだろうか。
その理由を思い出して僕はまたため息をついた。女だ。
その日、やることもなくなんとなく図書室の本の背表紙を眺めていると、突然肩を叩かれた。
彼女は同じ学科の女の子だった。ショートカットの髪がよく似合う、大きな目の子だった。
僕が振り返ると、彼女はその大きな目で、僕の目の奥を覗き込むように言った。
「ワタナベ君?」
そうだ、と僕は答えた。
「本好きなの?」
「嫌いじゃない」
ふーん、と興味なさそうに言うと、彼女は本棚から失われた時を求めて日本語訳第一巻を取り出してその背表紙を不思議そうに眺めた。
「これ、読んだことある?」
彼女はまた僕の目を覗き込むように言った。彼女はそういう話し方をするようだ。
ない、と僕が答えると、彼女は残念そうにそれを元の場所に戻した。
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