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「どんな話なんだろう」
「読んでみれば?」
嫌よ、と彼女は首を振った。
どうして、と僕が訊くと、彼女は幾分かむっとした様子で僕の目を覗き込んだ。
「私、活字アレルギーなのよ。冗談じゃなく、ほんとに。本を五ページでも読もうものなら体が震えだして奥歯がガクガクいっちゃうんだもん。私、物語って大好きなのに、こんなのってないと思わない?」
ないと思う、と僕は頷いた。確かにそれはかわいそうだ。
できることなら僕が代わってあげたいね、と言うと彼女はにっこりと笑った。
「ワタナベ君っていい人ね。もっと変な人だと思ってた。どうしていつも一人なの? 一人が好きなの?」
好きなわけじゃない、と僕は言った。
「僕の場合誰かと一緒にいることに他の人よりエネルギーを必要とするんだよ。その方面のエネルギー効率がすこぶる悪いんだ、僕」
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