きいろがない!

6/9

7人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
何時だろうと携帯を探して辺りに目をやった瞬間、 「あっ…」 …上総の着信音が流れ始めて探していた物は部屋の中央のローテーブルの上でチカチカと赤く光っている。 そういやけっきょく夕飯を食い損ねた。 ベットをおり、そこまでずるずる這っていく。 取り上げると携帯電話は赤く発光しながら再び同じメロディーを頭から流し始めた。 「…はい」 ボタンを押し、左耳に押し当てる。 「梓!」 だいぶ待たせたのに気にしてないのか、いや待たせたから余計にためが入って勢いが増したのか、 「…なんだよ」 「お待たせ!」 ライブの盛り上がりの興奮そのままの声が飛び込んでくる。 「待ってねーよ」 は…たぶん嘘。 「あはははは」 酔っているわけでもないのに楽しそうだな。 「…どこにいんだよ」 「会場出てー、うーん…駅から向かってる!」 「ふーん」 それにしては後ろが静かだ。 夜だからって人が集まっていてその静けさはちょっと不思議だ。 「そこ、どこ駅だよ」 疑問を投げると、 「ああ、じつはさ…」 と、 「…は?」 呆気にとられる駅名を上総は口にした。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加