5人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
「あいつ、サボって祭り見に行ってたのか。
でもよかった、見つかって。
おい、こっちこいよ。」
なんとなく悪い人じゃなさそうなので後をついていくと、5人のお兄さんお姉さんがせわしなく働いていた。
「おーい、きっこ。
お前の無くしたやつ
この子が見つけてくれたぞ。」
「え、ホント。」
皆が手を止め、そのうち1人のお姉さんが小走りで近づいてきた。
「うそ、うわ、ありがとお。
助かったわ。」
と、満面の笑みで陽菜ちゃんに抱きついた。
解放されたところで手に持ったバチを渡すと
「こっちおいで。
ここにお座り。」
僕らを連れて石段に並んで腰かけ
「おーい、べんちゃん、やるよ。」
そう言うとお姉さんは受け取ったバチで琵琶を弾き始めた。
するともう一人のお姉さんが僕らの前で踊り始めた。
お姉さんの奏でる音色は最初は物悲しく、それにあわせてもう一人のお姉さんが、風雨や動植物を模倣したように踊りだした。
琵琶の音色が激しくなると、演武のような迫力で躍動し、やがて穏やかな旋律に合わせて水鳥のように優雅に舞い、大樹に包み込まれるように終止符を打った。
最初のコメントを投稿しよう!