祭りの夜

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「あいつ、サボって祭り見に行ってたのか。 でもよかった、見つかって。 おい、こっちこいよ。」 なんとなく悪い人じゃなさそうなので後をついていくと、5人のお兄さんお姉さんがせわしなく働いていた。 「おーい、きっこ。 お前の無くしたやつ この子が見つけてくれたぞ。」 「え、ホント。」 皆が手を止め、そのうち1人のお姉さんが小走りで近づいてきた。 「うそ、うわ、ありがとお。 助かったわ。」 と、満面の笑みで陽菜ちゃんに抱きついた。 解放されたところで手に持ったバチを渡すと 「こっちおいで。 ここにお座り。」 僕らを連れて石段に並んで腰かけ 「おーい、べんちゃん、やるよ。」 そう言うとお姉さんは受け取ったバチで琵琶を弾き始めた。 するともう一人のお姉さんが僕らの前で踊り始めた。 お姉さんの奏でる音色は最初は物悲しく、それにあわせてもう一人のお姉さんが、風雨や動植物を模倣したように踊りだした。 琵琶の音色が激しくなると、演武のような迫力で躍動し、やがて穏やかな旋律に合わせて水鳥のように優雅に舞い、大樹に包み込まれるように終止符を打った。
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