入学式!

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「フフフ」 「どうかしたのか?姉さん」 僅かに漏れ出した笑みを目敏く捕まえた玄が、穏やかな声で問い掛けてくる。 「時間が経つのは早いなぁ~って思ってね。この前まで私達は己の全てを賭けて戦っていたわ。お互い、愛しき人への想いを胸に」 私の言葉に、玄は少し暗さのある苦笑を浮かべる。若気の至りを暴かれる恥ずかしさ……だけではないだろう。 手に顎が当たる感触から、ソフィーも俯いているのが分かる。 「でも、それも終わった。しかも、私が望んでいた最高の形で。そして、今は私達の子供達がまた物語を紡ごうとしている。私も歳を取ったものね」 「二十代半ばで年寄り臭いこと言うなよ」 「そうですよ。旦那様も待っているのですから」 あぁ、そうだった。今夜も夕食を共にする約束をしているのだ。 絶対に今日は私が料理を作るぞ~!料理人達に邪魔なんかさせるもんか! 何作ろうかなぁ~ギルに念話で聞こうかな? でも、最近作ってなかったからサプライズでびっくりさせるのも……あぁ、でもでも私が作るって言ったらギルお腹空かせて待っててくれるかも! 「顔、蕩けきってるな」 「はい、幸せそうです」 弟夫婦に生暖かい目で見守られながら、しばらく私はくねくねしながらギルとの楽しい晩餐をあれこれ妄想するのであった。
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