火曜日

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「…んあ?」 肌寒さに目が覚める。妙にだるい身体をなんとか起こして、辺りを見回した。 「そっか、俺」 あの後気を失って、そのままここで寝てしまったのか。ちかちか光っている携帯の画面を見ると、もう朝の5時過ぎであることが分かった。うわ、俺かなり寝てるじゃん。なんで一回も目が覚めなかったんだ。 「あ、龍也さん。目が覚めたんですねー」 「!」 ひょっこりと俺の顔を覗き込んできたのは、昨日突然現れた死神だった。死神ーー神無月詩音は、とても死神とは思えないくらい無邪気な笑顔でおはようございますー、と言いのけた。 「龍也さんてば、まだ話の途中なのに寝てしまうんですもん。私かなり困ってたんですよー」 せっかくの残された時間をもっと有意義に使わないとー、と続けられた彼女の言葉に、一気に体中の血の気が引いた。そうだ、俺、一週間後に、 「…ひとつ、いいか」 「はいどうぞー」 「……なんで死ぬのが俺なんだ?」 自慢じゃないが、俺は一度も悪の道に染まっちゃいない。言うなれば優等生の部類に入る人種である。なのになんで俺なんだ?そんなの、絶対おかしいだろ。 「…すみません、理由を話すのは禁止されているんです」 「な、んでだよ。俺には知る権利があるだろーが!」 「落ち着いてください、龍也さん。何もあなたが絶対に死ぬとは限らないんです」 「…は?」 この死神は、いったい何が言いたいんだ? 「詳しいことは私にも分かりません。ですが、あなたは何か大切なことを忘れている。それを思い出せたら死は免れるそうです」 「…大切なことなんて、そんなの分かるわけねえじゃねえか」 「そうでもないんですよ、龍也さん」 「どういう意味だ?」 「なんでも、あなたの忘れてしまった記憶の手掛かりが、私なんだそうです」 「…おまえが?」 はい、と頷き、どこから取り出したのか分厚い本に視線を落とした。 「私は生前、あなたと深い関わりがあったみたいです」 「…全然覚えがねんだけど」 「私も生きてた頃の記憶はないので、これに関してはあまり手助けすることが出来ませんねー」 「頼りねえな」 「あ、でもでもですねー!今の私の格好は充分な手掛かりになりませんか?」 くるりと一度回ってみせた彼女に、確かにそうかしれないと思った。彼女は隣町の高校の制服を着ていて、その高校に通っている知り合いも俺にはいたからだ。
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