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うだるような暑さに気が滅入りそうになる。止まらない汗を拭いながら、やっとの思いで自宅まで辿り着いた。親は出掛けているのか、家の中は蒸し暑かった。どこに行っても暑いのか、だなんてぼやいてみてもこの暑さがなくなるわけじゃない。とにかくクーラーだ。温暖化なんて、単語が一瞬頭に思い浮かんだがそんなのは無視する。温暖化云々より、今はとにかく涼みたかった。リビングに足を踏み入れると、何故か背中がぞくりとした。まだクーラーも何もつけてないのに。そんな疑問は次に襲いかかった蒸し暑さに掻き消される。テーブルにあったリモコンを手に取り、ようやっとクーラーを起動させる。段々と快適になっていくリビングに、俺は漸くソファーに腰を下ろした。そしてテレビでも観ようかと視線を上げた瞬間ーー
「…え」
思わず間抜けた声が出た。俺の視線はある一点に集中する。やつは俺の視線に気づいたのか、屈託のない笑顔を浮かべた。
「はじめましてー。私、死神をやらせて頂いてます、神無月詩音です。今日から一週間、お世話になるんで、よろしくお願いしますね、北川龍也さん!」
くらりと、眩暈がした。
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