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……とにかく、落ち着け俺。
なんとか呼吸を落ち着けて、いまだに微笑んでいる彼女を見つめる。俺の聞き間違いじゃなければ、彼女は自分を死神だと言った。…いやいやいや。
「…今時流行ってんの?」
「え?」
きっと彼女は頭がおかしいんだ。そうじゃなければ、自分のことを死神だなんて誰が言うものか。でも、だとしても、だ。何故彼女はうちのリビングにいるんだ。ちらりと窓を見てみるが鍵は当然のこと閉まっている。鍵を開けっ放しなんて無用心なこと、俺の親がするわけがない。じゃあ何故彼女はここに入れたのか。そんな俺の疑問を見透かしたのか、彼女がああ、と呟いた。
「私がなんで家の中に入れたのかが不思議なんですねー。分かりますよー。私も死神になってびっくりしましたもん」
見てください龍也さん!と馴れ馴れしく俺の名前を呼んで、彼女がテレビに向かって手を伸ばした。信じられない光景に、目を見開く。
「見てのとおり、私は物質に触れることが出来ません。勿論この窓にも触れられないので、すり抜けてこの部屋に入りました」
これで信じてもらえましたかー?だなんてあっけらかんと言い放つ彼女がなんだか憎らしい。こんなの見せつけられたら、信じないわけにはいかないじゃないか。
「それでなんですけどねー、本題に入ってもいいでしょうか?」
「本題…?」
はいー、と頷いて、彼女はふっと顔を伏せた。
「龍也さん、貴方は一週間後に、」
嫌な予感がした。
「…死にます」
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