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駅舎を出ると、一面、黄金色の海が広がっていた。
吹く風にザザーと波を打つ葉と、重たそうに下を向き微かに揺れる秋色の稲穂。
車輪の擦れる音が遠ざかれば、まだ夏の名残を残す油蝉の声が、乾いた風にのって微かに聞こえた。
私は、田舎然とした田んぼの畦道を歩く。
日常的に履いている革靴に少しばかり苦笑い。
舗装されていない土の道。
歩く度に跳ねる泥は恵の忘れ物だと思えば、多少なりとも我慢は出来ようか?
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