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着いた…。
どうしよう…何階?何号室?
これはもう一階ずつ住人に聞いて回るしかない。
各階の住人一人にきけばこの階にいるかいないかくらいは分かる。
それもこれも先輩がこのマンションの住人だったらの話だが…。
そして三人目に聞いたとき、それは分かった。305号室。
インターホンを鳴らすとドアが開き、先輩が出てきた。
「…やっぱストーカーは違うな」
第一声がそれですか。労いの言葉なんかは期待していませんでしたが…。
でも、久しぶりの先輩。会えて嬉しかった。
先輩が奥に入って行くのを見て後をついていく。
「お邪魔します」
部屋に入り、一番先に目に入ったのは、ラグの上に広げられた大きなジグソーパズル。
「探せ」
「何をですか?」
「この状況見てわかんない?」
パズルを指差して不機嫌に言う。
パズルをよく見ると、3ヶ所はまっていないところがあった。
「分かりました」
先輩は一人掛けのソファにドカッと座って、イヤホンを耳につけ目をつぶってしまった。
ラグの下に一つ、テレビのラックの下に一つ見つけた。けれど、もう一つがなかなか見つからない。
先輩の座るソファの下を覗いてもなかった。
他にありそうなところはどこだろうと見回したとき、それは見つかった。
先輩の座るソファの肘掛け部分と座面の間に挟まっている。
…
「先輩」
呼んでみても反応はない。イヤホンをしているのだから当然だ。
目も閉じているから寝ているのか起きているのかも分からない。
俺はそっと気づかれぬよう取ることにした。
パズルに手が届きそうになったとき、頭上から先輩の声がした。
「何?」
上を向くとすぐ近くに先輩の顔があって、その目に囚われて目を逸らすことが出来なくなった。
綺麗な目。先輩の目って少し茶色いんだ…。
明らかに不機嫌な先輩は、荒々しくイヤホンを外した。
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