12/20
前へ
/23ページ
次へ
着いた…。 どうしよう…何階?何号室? これはもう一階ずつ住人に聞いて回るしかない。 各階の住人一人にきけばこの階にいるかいないかくらいは分かる。 それもこれも先輩がこのマンションの住人だったらの話だが…。 そして三人目に聞いたとき、それは分かった。305号室。 インターホンを鳴らすとドアが開き、先輩が出てきた。 「…やっぱストーカーは違うな」 第一声がそれですか。労いの言葉なんかは期待していませんでしたが…。 でも、久しぶりの先輩。会えて嬉しかった。 先輩が奥に入って行くのを見て後をついていく。 「お邪魔します」 部屋に入り、一番先に目に入ったのは、ラグの上に広げられた大きなジグソーパズル。 「探せ」 「何をですか?」 「この状況見てわかんない?」 パズルを指差して不機嫌に言う。 パズルをよく見ると、3ヶ所はまっていないところがあった。 「分かりました」 先輩は一人掛けのソファにドカッと座って、イヤホンを耳につけ目をつぶってしまった。 ラグの下に一つ、テレビのラックの下に一つ見つけた。けれど、もう一つがなかなか見つからない。 先輩の座るソファの下を覗いてもなかった。 他にありそうなところはどこだろうと見回したとき、それは見つかった。 先輩の座るソファの肘掛け部分と座面の間に挟まっている。 … 「先輩」 呼んでみても反応はない。イヤホンをしているのだから当然だ。 目も閉じているから寝ているのか起きているのかも分からない。 俺はそっと気づかれぬよう取ることにした。 パズルに手が届きそうになったとき、頭上から先輩の声がした。 「何?」 上を向くとすぐ近くに先輩の顔があって、その目に囚われて目を逸らすことが出来なくなった。 綺麗な目。先輩の目って少し茶色いんだ…。 明らかに不機嫌な先輩は、荒々しくイヤホンを外した。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

71人が本棚に入れています
本棚に追加