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「何?」
「あ、そこにパズルがあるんで取ろうとしただけです」
指差す方向を見ると、先輩はそのピースを手にしてソファを降りた。
そしてそれを未完成のパズルにはめていく。
あとの二つを渡すと、先輩はパズルを完成させた。
すると先輩は笑った。あの底意地の悪そうな笑顔じゃなく、それはそれは素敵に。
ヤバい。綺麗。可愛い。
そんな先輩に見とれていると、冷たい言葉が降ってきた。
「帰っていいよ、さよなら」
「…はい、じゃあ」
また、呼んでください。お願いします。
パズルでも何でも探しますから。
靴を履いて、いざ出ていこうとしたとき、先輩に呼び止められた。
「忘れてた、ご褒美何がいい?」
「え?」
「言うこと聞いたら一つくれてやる約束」
あ…じゃあ…、
「沢木先輩に言ってくれませんか?」
「朝日に?なんて?」
「塚本が、俺の友達が困ってて…沢木先輩がその…ついてくるから…」
「あいつが?へぇ…珍し」
先輩知らない?先輩の差し金じゃないのか。
「言っといてやる」
「お願いします」
ドアが締まる直前、どうしようもなく言いたくて、言ってしまった。
「先輩、好きです」
先輩からの返事はなく、ドアが閉まる音と鍵をかける音だけが響いた。
先輩の態度は素っ気ないけど…ずっと、ずっと言いたかった。伝えたかったんです。
あの時コンビニで会えたきり会えなくて、言えなかったから。
先輩。俺、毎日言ってます。心の中で毎日。
先輩のことが好きだって。
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