71人が本棚に入れています
本棚に追加
あれから数日後、白光先輩にお願いしたことが沢木先輩に伝わったようで、沢木先輩は教室に来るなり「交換条件」を塚本に出してきた。
「放課後のストーキング、10分間限定にする。その代わり今日から名前で呼ぶこと」
「…いきなり何言ってるんですか?というか10分だって嫌です」
「それは認めない」
沢木先輩のどこか威圧的な言い方に怯んだ塚本は、交換条件を飲んだ。
そして沢木先輩は、紙粘土で出来た花を塚本に渡すと教室から出ていった。
片手に花を持ったまま机をバンッと叩く塚本。
「大丈夫…?」
「10分だって嫌なもんは嫌だ…けど、家帰るまでずっとよりはマシ?つかなんでこんなに悩まなきゃなんないの!?」
「放課後ずっとって…ほんとにずっとなの?バイト中は?」
「終わるまで客として居座ってる。名前なんか呼ばないぞ…まず呼ばなきゃなんない事態に遭遇しないだろうし」
昼休み。
沢木先輩は当然のように教室に入ってくる。もう回りもそれを気にしていない。
塚本の前の席の椅子をぐるっと回転させたあと座ると、そのまま塚本を真っ直ぐ見つめる。
塚本はそんな事態に遭遇しないと言っていたけど、沢木先輩は手強かった。
「今、君の目の前にいるの誰?」
塚本は顔を横に向けてわざと目を合わせないようにしている。
「放課後10分間、君は誰に追われるの?」
「マジでうざ…」
その後も、沢木先輩は塚本に名前を呼ばせようと、答えが必ず自分になる質問を繰り返していた。
塚本は今日も大変だ。
最初のコメントを投稿しよう!