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放課後。
帰る準備をして塚本と一緒に教室を出る。今日は塚本の家に遊びに行く約束をしているからだ。
教室を出たときから沢木先輩は少し離れたところから一定の距離を保ってついて来ている。
校門を出たところでチラッと後ろを振り返る。
沢木先輩は大胆だ。あそこまで隠れず隠さずのストーキング。
携帯を弄る訳でもなく、ただ本当にずっと塚本を見ている。
塚本が小声で話しかけてきた。
「良かった。今日結人いて。俺いつかなんかされんじゃないか不安でさ…刺されたり」
塚本は本当に不安そうな顔をしていた。
「別に恨みがあるわけじゃないんだしそれはないんじゃ…」
「それなんだよ…俺あの人になんもしてないよ?なんでこんなことされるのかが分かんない…」
それだ。俺にも分からない。沢木先輩がこんなことをする理由が。だけど一つだけ思いつくことならある。それを塚本に言うことは絶対に出来ないけれど…。
家に着くと、塚本は先輩にわざと大きな声を出した。
「さよなら!」
ドアが閉まった途端に沢木先輩への文句を延々と言い出す塚本。
「10分超えてる!」
二階の部屋に行く途中、階段を上がりながらも塚本の怒りは収まらない。
そして部屋に入ると少しカーテンを開けて外を見た塚本は顔を青くした。
「いる…」
「いつもこうなの?」
いつもは家に着くとすぐに帰っているらしいのだが、今日は一向に動かない。
その内に雲行きが怪しくなり、雨が降り出した。
けれど先輩は動こうとしない。
塚本も気になるようで何度も外を確認している。
「知らない知らない!」
関係ない!と声を大にして言ったとき、塚本の携帯が鳴った。塚本の顔を見ればかけてきた相手が誰だかは分かる。
「先輩?」
いつまでも鳴り続ける着信音に、遂に塚本が爆発した。
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