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土曜日。
「あーあ、なんか沈むなぁ。バッドエンドだって知ってたら観なかったかも」
「結末分かってたらつまらないよ。なかなかいい終わり方だったと思うけど」
吸血鬼もののその映画。
「会いたくて会いたくて」と、主人公の男がヒロインを心の中で呼びかけるところから始まる。
会いに飛び出す男と逢瀬を重ねるうちに、初めは嫌だと言っていたヒロインも心開いていくのだが…。
「何、結人。何笑ってるんだよ?」
「何でもない」
俺には無理だと思ったら、笑えてきた。会いに飛び出したところで会ってはもらえないだろうし。その前に勝手に会いにいけばきっと別れると言われる。
「結人キモい」
「容赦ないなぁ…。夢でいいから出てきてくれないかなぁって思っただけ」
「結人ー…。だからもうやめろって。元々そんなのつき合ってるって言わないじゃん」
つき合いと言ってもただの口約束。一方的な条件に踊らされ、ただ待ちわびるだけのこの関係が「交際」と言えるものではないことは分かっている。
だけど、繋がりを失うのはどうしても嫌だった。
「会いたいなぁー…」
「はぁ…。もう会いに行ったら?そんでバッサリ斬られてこい」
明るく笑顔で言う塚本と別れたあと、歩きながら携帯を確認する。
この確認作業も最近では少し苦痛だ。
先輩。
コンビニまでならいいですか。
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