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その日から、俺は学校帰りに先輩のマンションの近くのコンビニに寄り道をするようになった。 「ありがとうございましたー」 今日もまたハチミツづくし。ハチミツレモンの飲み物にハチミツレモンの飴、それからハチミツジャムのホットケーキサンド。 先輩がハチミツ好きだと知ってから、前にも増してハチミツ製品をチェックするようになった。 店を出て、歩きながらマンション方向を見上げる。 たったこれだけのために毎日コンビニに通う自分は、我ながら気持ち悪い…。そしてまた今日も会えなかったと肩を落として帰る。 当然今日もいつもと変わらぬ幕引きだと思っていた。 その声を聞くまでは…。 「ストーカーじゃん」 久しぶりに聞いた声に、一瞬戸惑う。発した台詞に棘はあるけれど、その声はまさしくずっと聞きたかった人の声だった。 先輩は隣にいる男に、俺を紹介する。 「こいつ例のストーカー」 「へぇ。随分俺とか他のとタイプ違うじゃん。あのふざけた条件、俺は絶対無理だな。千秋に手出せないなんて」 笑いながら言う男の言葉など、ほとんど耳に入ってこなかった。 男の隣でいたずらっ子のように笑う先輩が、男を連れ立って背を向け歩いていく。 それを見ながら思うのは、やっと会えたこと、声を聞けたこと、久しぶりに姿を見れて嬉しかったこと。 それからやっぱり性格が悪いこと…。そして、やっぱり俺は先輩が好きだということ。 「待って…」 想いは溢れると厄介だ。伝えたくてどうしようもなくなる。 「待って…!」 引き留める声は震えていて、引き留められた先輩は冷ややかな目をしていた。だけど、走り寄る足は止められなかった。 「好きです…!先輩…あの、好き…!」 「俺、これからこいつと寝るよ?お前分かってる?」 「はい…分かってます。だけど言いたかったから…ずっと…」 男と笑う先輩は、男にキスをした。 「条件追加。嫉妬しないこと」 「分かりました…。あ、えっと…これ、良かったら食べてください。ちょうど2つ入ってるし」 ハチミツジャムのホットケーキサンドを差し出す。 連れの男が受け取ったが、それはすぐに男の手によってゴミ箱行きとなった。 その夜、俺は当然眠れなかった。だけどそれは不思議と嫉妬心からではない。 久しぶりの先輩の姿に…声。 高揚した心が簡単に落ち着くことはなかった。
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