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それは、小6の夏。 お母さんに回覧板を頼まれたときだった。 「最近いたずら多いから直接渡してね」 渡しに行くと、その家の中学生が泣いていて… 透けたシャツから見えた文字。 すぐにいじめだと分かった。 泣きじゃくる秋山さんを放って置くことが出来なくて、背中のそれを消してあげたいと思った。 背中を流しながら思っていた。 なんだろう、これ。ここって秋山さんだよな。 アイドルの名前?でもわざわざ好きなアイドルの名前をいじめてるヤツに書かないよなぁ…。 あ、嫌いなアイドルとか? そもそも名前じゃないのかもしれないし… でも、聞けるはずもなく、その後俺はすぐに親の仕事の都合で引っ越した。 住む場所が変わっても、学校が変わっても、背中に書かれたその漢字四字だけは頭から離れなかった。 ある意味興味を持ったんだろう。 ある日宿題をしているときだったと思う。ノートにその文字を無意識に書いてしまった。 すぐに消そうと思ったのになかなか消せず…。 はっこう?しろびかり?じゃないよな。なんて読むんだろう。 一階で夕飯の支度をしているお母さんになんて読めるのか聞きに行ったんだ。 「ハクミツじゃない?」 … ハクミツ… 分かったところでどうということはなかったけれど、それでもやっぱり気になった。 実際にいる人なのかどうかも分からないのに、何故か無性に探したくなった。 とは言っても、何か伝がある訳でもないし、何の手掛かりもない。
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