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俺は気づかない内に集団に近づいてしまっていた。
すぐに立ち去ろうとした。正直こういう奴らは怖いし、立ち去りたい。
だけど、今そうしたら…
今度いつ先輩を見れるか分からない。
切羽詰まった俺は自分でも信じられない行動に出た。
「あの…白光先輩…」
「…なに?」
初めて聞いた先輩の声。感動して何が何だか分からない状態になった。
だけどきちんと伝えたい。あなたに会いたかったこと。
「会いたかったんです。白光先輩に…」
「俺、お前知らないんだけど」
「初めは先輩の名前に惹かれました…それで、ここで偶然先輩を見て…制服、南松上だから受験して…ずっと、あ、会いたくてっ」
「なにそれストーカー?」
先輩がからかうよう言うと、一斉に周りが笑いだした。
恥ずかしい。逃げたい。
でも…
「先輩が好きです」
「そんな背景と溶け込んでるようなツラでよく言えるね」
…
「好きです」
「いいよつき合っても」
…
なんで…
「一人増えるも二人増えるも変わんないし、その代わり、条件全部飲んでね」
意地悪い笑顔を浮かべてそう言うと、先輩は周りの連中とその場を離れてしまう。後ろ姿に大声で話しかけた。
「条件ってなんですか!?」
先輩は前を向いたまま気のない返事をした。
「考えとく」
…
「俺…辻、結人です!」
先輩。俺、辻結人です。
覚えてください。
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