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ジンが待ち合わせの場所に行っても、ガンは現れなかった。
こんな事は今まで一度も無かった。
嫌な予感がする。
そこで州軍最高司令官として州警察に協力要請して、州都の各所に設置されている防犯カメラを閲覧させてもらった。
ジン以外にガンの素性を知るものは居ないから、ジン自身が見付け出してやらなくてはならない。
人一人の人生をスパイとしてしまった責任。
唯一の上司としての責任。
見付けたガンは、逃げていた。
調べてみたら、追っ手はケダモノ・ファミリーの殺し屋として指名手配されている者だった。
決定的瞬間までは死角になっていてどのカメラにも映されていなかったが、ガンの襲われた場所は特定できた。
情報部に所属している残留思念を視れる能力を持つ魔族軍人を連れてきて、そこで何が起こったのか視てもらった。
頭を強打されながらも、ガンは夢中で逃げた。
フラフラになりながらも、秘密工作員として訓練を受けて、本能にまで叩き込まれた戦闘技能。
殉職するときは、IDカードを壊す。
たとえ身元不明の死体となっても、任務中に死の危険にさらされたら、軍規でそう定められている。
まさに、IDカードを割って壊そうとした時。
いつの間にか追っ手をまいて逃げ切れていた事に気付いた。
とにかく、押収してきた麻薬をジンに届けなくてはならない。
ケダモノ・ファミリーがガンを見失っている今のうちに…。
近くのコンビニに駆け込んで、瓶に詰めてきたソレを宅配便として出した。
ケダモノ・ファミリーに目を付けられた自分が持っているよりも、自分をオトリにして現物は別ルートで…。
安心したガンは、IDカードを握り締めたまま路地裏で気絶した。
現物が届いた頃に、ジンは記憶を失ったガンの足取りをつかんだ。
州都の人の出入りは、全て州軍の監視カメラで記録されている。
その一つにフラフラと州都を出ていくガンが映っていた。
その他、天領と貴族領の境界なども州軍の監視カメラで記録されているから、ジンがそれを頼りにガンの足取りを追った。
ケンタ侯にはまだ内密にしなくてはならない。
ジンしかガンを識別できない。
そして、ガンは真っ直ぐにピーチレイン北部へと向かっていた。
──本能だけで…無意識に任務を続行しようとしてる…
自分の命令に命を懸けてくれる部下の姿を見て、ジンは自分でガンを助けに行く決意をした。
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