第四章:エンディコットの鐘

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第四王州の州都アキバハラーン。 その魔王宮城の中の内務卿執務室に呼び出されたマシュー・エンディコット子爵。 そこで内務卿に告げられた内容。 「エンディコット子爵家に進んでいた伯爵位への昇格と、陛下からの恩給に対して、 家督者のエレノア・エンディコット子爵夫人から正式に辞退する旨の書簡が内容証明で送られてきた」 内務卿執務室から出てきたマシューは、愕然としながら壁を拳で強く殴った。 ∑∑ダン!!! 〔∑∑何を考えているんだっ!!!(怒髪)〕 そんなマシューを、たまたま通りかかった何人かの宮廷貴族が見付けた。 「おやおや。 庶民出の馬の骨が暴れておるわ。 王宮が何やら粗野で野蛮な酒場のようになってしまったのぅ…。 嘆かわしい限りじゃ」 「あな。 忠勤はなはだしく、両陛下のお覚えめでたい子爵どのにそのような事を申しては、どんな仕返しをされるか判りませぬぞ? 庶民の分際でありながら、没落した貴族の娘をまんまとタラシ込み、多くの者たちを陥れ、金品をばら蒔き、強引にここまで登ってきた悪魔のような魔族ですぞ?」 「臭い臭い。 清らかなはずの伏魔殿であるこの魔の巣窟に、なんとも卑しい臭いがしてかなわんわ」 そんな事を楽しそうに話しながら通り過ぎていく純血貴族たちに、マシューはグッとこらえる。 そして、脇に退いて道を空け、無言のまま丁寧に頭を下げる。 よくもこんなに飽きずに思い付くものだと、むしろ感心してしまうくらいの罵詈雑言が次々にマシューに浴びせられる。 中には聞くに耐えない暴言や、庶民の男を夫にしたエレノア夫人を淫乱な娼婦か何かのように卑猥に中傷するものも有った。 〔こらえろ…俺…。 こんなの、エレノアと結婚しようと決めたときから覚悟してた事じゃないか…。 こんなの、一時間後には終わってる。 やり過ごすんだ。 エレノアとアレンの顔を思い出せば…、俺は…どんな事だって耐えられる…〕 マシューは、ずっとバカにされ続けながら、叩き潰そうとしてくる宮廷の中で一人で闘ってきた。
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