第四章:エンディコットの鐘

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ガンがペロと塔の上でせっせとエンディコットの鐘をお掃除している頃。 塔の下の子爵城は思いがけない賓客を迎えていた。 雨の中、パン屋の女将が向かいの支所に駆け込んで、大貴族の御曹司がやってきたと知らせた。 その時は、ちょうどゴンからパロに交替するタイミングだった。 と、言うか。 支所に詰める使用人が交替するタイミングを見計らって、ロイ・モスラに扮したカゲトミがパン屋に姿を現した…というワケだ。 直接支所に行くよりも、村の名店であるゴールデンボール・ベーカリーを通じて知らせる。 偶然を装って、真実味を出す。 驚いたゴンが、それならこれから城に帰るところだから案内する…と、当然ながら言う。 いきなり城に参上するより、使用人の交替のタイミングで現れて案内させ、使用人と共に城に出向いた方が信用される。 ついでに、だめ押しでジンがゴンに耳打ちをする。 「モスラ公領にも行ったこと有るんだけど、その時にロイさまを見掛けたことが有ってね? 本物よ…?あれ」 王州全土、時には魔界全土を旅する吟遊詩人としての言葉で信用させる。 まさか、しがない旅の吟遊詩人のハート(ジン)と大貴族の衣装をまとったロイ(カゲトミ)が、裏で通じてるとは思いもしない。 雨の日でも大量の荷物を城に運ぶゴンに、ロイが「大変ですね?」などと微笑みながら案内してもらった。 ゴンに案内してもらって子爵城に着くと、支所のパロから城に電話連絡されていたようで、マーガレット執事が出迎えてくれた。 すぐに応接間に通されて、濡れた衣服を乾かせてもらう。 「おそれながら、IDカードに入城データを書き込みませんと、随所の警備システムが侵入者と誤認して作動してしまいます。 お借りできますか?」 マーガレット執事がロイに言うと、ロイが「はい」と微笑んで紫色のIDカードを差し出した。 ピロに命じてロイ(カゲトミ)にお茶と菓子を用意させ、相手をさせている間に、マーガレットが警備室にやってきた。 そこには、エレノア夫人が待っていた。
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