第四章:エンディコットの鐘

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マーガレットが手にしている紫色のIDカードを見て、エレノアが緊張する。 「グランドスラムのIDカード…」 一般の白いカードではなく、紫色。 魔王が直々に特に高位の魔族に発行したものは黒く、最上位階級の魔族である証。 ブラックカードと呼ばれ、一般のIDカードを発行できる能力や様々な特権と高い社会的信用を得られる。 有爵領主であるエンディコット子爵夫妻も、当然ながらブラックカード保持者だ。 特別なIDカードとしては、このブラックカードの他にあと2つ有る。 一つはソロモンと呼ばれる、特定の属性と特定のクラスの組み合わせによって現れる星形のIDカード。 そしてもう一つが、グランドスラムと呼ばれる、この紫色のIDカード。 カード発行能力を与えられた高官ではなく、ブラックカード保持者が発行し、更に縁者に四人以上の最上級クラス者が登録されている者。 最上級クラス。 魔王一族の魔王クラス。 大アルカナクラス。 純血貴族一等。 小アルカナクラス。 子爵家嫡男のアレンですら、爵位を継いで魔王からブラックカードを発給されるまでは、通常の白いIDカードである。 カイ・モスラ公爵は、ブラックカード保持者。 その実弟のロイのIDカードは、領主である兄のカイが発行した。 親戚縁者に純血貴族一等クラスがゴロゴロ居るモスラ公爵家。 その次男ともなれば、グランドスラムで当然。 歴然たる、公爵家と子爵家の差。 本来は重犯罪であるIDカード偽造だが、サキとジンには合法的に複製できる特権と特殊能力を魔王から与えられている。 実際に本物のロイのグランドスラムのIDカードを発行したカイの協力を得られれば、 王州政府特殊高官であるサキとジンの二人がかりでなら、何とかグランドスラムのIDカードも複製出来た。 カードにプリントされている顔写真は、カゲトミの物に変えて。 モスラ公領から出たことがないロイと、魔族に転生したばかりのカゲトミ。 この二人のどちらか片方の顔でも知られていたらバレてしまうが…。 カードをカードリーダーに挿入して、マーガレットがシステムを操作する。 そして…。 「王州人民登録台帳のデータと認証一致いたしました。 本物の公爵家ご次男、ロイ・モスラ公領総督さまです」 腹心で優秀なマーガレット執事の言葉に、エレノアが緊張を高めた。
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